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「いらっしゃいませ!」
店員さんは真っ白な歯を見せて、優しい笑顔で私を見ている。
その笑顔は芸能人みたいに眩しくて、服選びだけじゃなく人生すら相談してしまいたくなるほどだ。
マシュマロのような天使の唇は、とっても柔らかそう。
女の私にさえキスしてみたいと思わせる。
けれど、それでいて卑猥な想像をさせる妖艶さも持ち合わせている、贅沢な唇。
これは神様が創りたもうた人間の中でも群を抜く傑作品だ。
あぁ、嫌われたくない……
神の創造物の中でも、とびきり失敗作の私は、傑作品の前では上手く言葉を選べない。
「あ、あの……」
喉にタンが絡んで声が裏返ってしまう。
カァッと顔が熱くなるのを感じた。
きっと私の顔は真っ赤なんだろうな……。
小さく咳払いをして、もう一度声を出す。
「素敵な服が欲しいんです……」
店員さんは私の言葉に、一瞬キョトンとする。
そして、また笑顔になり「どんな服をお探しですか?」と優しく訪ねてくれた。
「う、美しい人だ……」
頭の中で呟いたつもりが、つい口に出てしまう。
店員さんは照れたように顔をクシャっとさせて笑った。
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