新天地

23/27

197747人が本棚に入れています
本棚に追加
/720ページ
椅子に座ると、バーテンダーがメニューを持ってやってきた。 「お飲み物は何にいたしますか?」 「あの……、オレンジジュースを……。」 緊張のあまりに、ろくにメニューを見ることが出来なかった私は、どこの店にも置いてあるであろうオーソドックスな飲み物を選んだ。 「かしこまりました」 バーテンダーはカウンターの裏側で私の飲み物を用意し始めた。 「フードメニューも充実しておりますので、良かったらどうぞ」 生のオレンジを手際良く絞り、グラスにジュースを注ぎながら爽やかな笑顔で言った。 なんというか…… この人は、 すごく すごく カッコイイ。 目鼻立ちがはっきりしていてハーフみたいだけど、それでいてすっきりとした印象の整った顔。 上品で、王子様のようだ。 色素の薄い目に吸い込まれそう……。 何それ、反則……。 見とれてしまう。 私は急に恥ずかしくなり、店内を見回した。 ボックス席には客が三組。 二十代後半の女性客が多い。 カウンターには中年の女性が一人座っている。 私がにやけた顔でバーテンダーに見とれてしまった事は、誰にも気付かれていないようだ。
/720ページ

最初のコメントを投稿しよう!

197747人が本棚に入れています
本棚に追加