新天地

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「お待たせいたしました」 バーテンダーは、オレンジジュースをコースターの上に静かに置いた。 私もそれをそっと飲んだ。 こんなに高級なオレンジジュースを飲んだのは初めてだ。 そのあと、バーテンダーは何度か気さくに話しかけてくれたけど、何を質問されても「へぇ……」とか「まぁ~そうですねぇ」とか間抜けな返事しか出来なかった。 話しかけられても緊張してしまうし、バーテンダーとカウンターの中年女性の会話を聞いている方が楽しかった。 中年女性は常連らしく、名前は"エミコさん"。 バーテンダーを"ミノル君"と呼んでいた。 私が呼ぶなら、"ミノルさん"だな……。 年上だもん。 どうやらエミコさんはミノルさんのことが好きなようだ。 エミコさんは、ミノルさんに飲み物を奢って、本人も強そうなお酒を何杯も飲んだ。 こうゆう場所はバーテンダーにも飲み物を勧めるのが常識なのか……。 それとも二人が仲良しだからなのか……。 どちらにせよ、私には飲み物を勧める勇気などないのだけれど。
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