下積み

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華奢なヒールのせいで、木製の床がゴツゴツと下品な音をたてる。 他の女の子よりも音が大きいのは、体重が重いせいだ……。 なるべく音が出ないように、爪先でゆっくりと歩いた。 今日は随分と混んでるなぁ…… カウンターには4席の空席があり、ボックス席には空席がない。 カウンターに座ってエミコさんの姿を探してみる。 天敵は居ないようだ。 私はほっと胸を撫で下ろした。 「待ち合わせですか?」 ――目の前には、王子様がいた。―― 王子様は、今日も優雅に、カクテルを作っている。 王子様には不釣り合いな寸胴のグラスに、王子様によく似合う爽やかなエメラルドグリーンのアルコール。 飲み物を混ぜる為の長い柄の銀色のスプーンは、王子様が握る剣。 物語の中から飛び出して来たような、人間離れした厳かな御姿。
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