下積み

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  「お前の手って職人みたいな手だよな」 ……この人にはデリカシーってもんはないのだろうか? ミノルさんにも私の汚い手を見られてしまった……。 顔が熱い。 例によって私の顔は真っ赤なはずだ。 「お前の手、傷だらけだな。 女の手じゃねーよ。 そもそもゴツイし。 俺がお前に仕込みさせるようになってすぐの頃、包丁の使い方がほんっとに下手で、よくバッサリ切ってたもんな~」 まだ言いますか…… 確かに私は、村上さんが辞めたために厨房掃除係から昇格し、やっと仕込みをさせてもらえるようになったのだが、業務用の包丁の大きさや鋭い切れ味に馴れず、よくケガをした。 「バッサリって言っても、2センチくらいじゃないですか!」 私は思わず浅田さんに言い返してしまった。
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