下積み

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「まぁ、俺も料理の道に入ってすぐの頃は、しょっちゅうケガしてたなぁ。 でもな、お前みたいに手の甲をケガする奴は見たことねーぞ? 普通、包丁でケガすんのは指先だろ? 何でお前は手の甲なんだよ? 不器用にも程があるだろ。 もしかしてお前……腹減って自分の手食おうとしたのか?」 「変なこと言わないで下さい!」 「お前、食い意地張ってそうな顔してるもんな~」 「ひ、酷いです!」 ミノルさんが浅田さんと一緒に笑ってる。 浅田さんにバカにされるのは慣れてる。 ただ、ミノルさんにだけは、こんな会話を聞かれたくなかった……。 酷いよ…… 浅田さん……。 どうせ私はデブで不細工の根暗だ。 でも、それは今だけだ。 私には目標がある。 きっと綺麗になってみせる。 もう、こんなふうに話のネタにされるのは真っ平だ。 ミノルさんへの恥ずかしさと、浅田さんへの悔しさで俯いたまま、顔を上げられない。 あぁ……やっぱり情けない…… その時、私の携帯がけたたましい音をたてて鳴り響いた。
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