下積み

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携帯の液晶を見て、血の気が一気にひいていくのが自分でもわかった。 「ちょっと……あの……私、お手洗い……失礼します!!」 早く電話に出なきゃ…… 私は静かな場所を求め、トイレへ急ぐ。 木製の床が私のヒールでゴツゴツと下品な音をたてている。 そんな音になど、もうかまっていられない……。 トイレの個室に飛び込み、左耳を左手できつく押さえ、右耳に神経を集中させた。 「…もしもし」 「……。」 返事がない。 この沈黙は嫌だ。 「聞こえる?もしもし」 「……聞こえるよ」 あぁ……この声は世界で一番嫌いだ……。
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