ファーストキス

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隣の棚には一枚一枚、綺麗にバスタオルが重ねられている。 私みたいな庶民には、まるで理解できない豪華さに恐縮してしまう。 服を脱ぐ前に、露天風呂に通じる引き戸を開ける。 屋上の露天風呂はとても暗くて、足元だけがライトアップされている。 これだけ暗いと、ちょっと怖い感じ……。 板張りの上を慎重に歩くと、湯けむりの中に、本物の露天風呂があった。 個人の住宅に「趣味で作った」ってレベルの露天風呂じゃない。 大人が7~8人ならゆったり、いやもっと入れそうな長方形の檜のお風呂に、にごり湯。 きっとどこからか天然の温泉をひいてるんだ。 脇には鹿威しまである。 私は急いで服を脱ぎ、体を洗うと、露天風呂に飛び込んだ。 「んー!!気持ちいい!」 お風呂から上がったら、今日は寝ちゃおう。 浅田さんに会うのはちょっと恥ずかしい。 湯船に浸かり、ふと外に目をやると、薄暗い照明の意味を理解できた。 バーベキューをした庭から見えた夜景が、屋上の露天風呂からも一望できるからなんだ……。 ギラギラと明るい照明の中じゃ、この綺麗な夜景がくすんでしまう。 さすが!! さすが土屋財閥!! いや…… バカな私には財閥の定義がわからないけども。
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