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何時間でも見とれていたいが、あいにく今日は時間がない。
私は使い古したダサいトートバッグから新しいバッグに携帯と財布を手早く移し替えた。
そして、そのまま古びたトートバッグをゴミ袋の中に叩きつける。
芋虫だった頃のダサすぎる服も、全て詰め込んであるゴミ袋にだ。そして、バッグを肩に掛け、ゴミ袋を乱暴に手に取って玄関を出た。
雨上がりの爽やかな空気が私を包む。
近所のゴミ捨て場にゴミ袋を投げ捨てる。
思いっきり投げたゴミ袋は、美しく弧を描き、あらゆる家庭から出たであろうゴミの山の一部となった。
私の体にこびり付いていた錆(さび)が剥がれ落ちた気がした。
私が颯爽と歩き出すと、ふと風が吹いた。
いたずらな風は私の頬をなでて髪をなびかせた。
せっかくセットしたのに……
髪が唇に張り付いてしまった。
グロスを厚く塗りすぎたせいだ。
風の強い日にグロスを塗るのは止めよう。
私はまだまだオシャレの初心者なんだ。
イイ女になるためには、日々勉強。
美しさを手に入れたからといって、努力を怠ってはいけない。
バッグの中からティッシュを出し、歩きながらグロスを拭き取った。
急がなければバスに乗り遅れてしまう。
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