始まりの出会い

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退屈な化学の授業…。 全て予備校でやった内容で何の刺激もない。 隣の机の女子、横倉は携帯をこそこそといじりながら、しきりに先生にバレまいとしている。 今日はめんどくさい実験はない…。 僕にとって、それはかえってもどかしく思えた。 このクラスに馴染めない。 まるで一世界を敵に回しているかのような感覚だ。 「化学の春休みの宿題って、今日の放課後のホームルームで提出だよね?」 …不意に小声で横倉が話しかけてきた。 「あぁ、そうだよ。」 だいたい何が言いたいか検討がついていた。 「あのさ、次の時間米山君のやったのうつさせてもらっていい?」 やっぱり…。 特に断る理由もなくて、首を縦に頷いた。 そうすると、また横倉は携帯の方に顔を向けた。 化学室での席は名前順に並んでいて、僕は1番後ろの窓際の席だ。 殆どの奴らが望むベストポジション。 自分にとってもそれは例外ではなかった。 名前があいうえお順な為、彰吾とは大分席が離れている。 奴は野球部の部活仲間と凄く楽しそうにして、少々度が過ぎたのか、先生に五月蝿いと注意されていた。 相変わらず、人生を楽しんでいるような笑顔を絶やさないな。 そんな事を思いながら、他にすることも無いので、取り敢えず授業の反応速度の条件に集中した…。 「(mol/l・時間)単位時間あたりの反応物質、あるいは生成物質のモル濃度の変化量を…」 先生がここまで解説していると 【キーンコーンカーンコーン…】 しきりに鐘が鳴った…。
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