ご主人様とメイド

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ぐぐっと七瀬に近付き顔をじーっと見られる。七瀬もいきなり接近されて身体が強張る。 (な、何なの?)   「僕、空南(そらな)」 「僕、海斗(かいと)」 「「君名前なんて言うの?」」 声のトーンもそっくりな双子の顔を交互に見て混乱する。ホワイトボードに名前を書きたくても双子に両手を握られてしまっている状態だ。 その様子を見ていた恭也は本人の代わりに双子に紹介する。   「ありゃりゃ…、北岡七瀬ちゃんだよ。七瀬ちゃん、この双子は知多兄弟。五年生」 「「ナナかあー。宜しくねー」」 (いや、あの…七瀬なんですけど…) 「「あはははっ!」」 満面の笑みを浮かべられたまま、何回も大きく手を上下振られて、激しい握手をさせられる。 どう対処すればいいか困っているとドアの開く音が聞こえた。 「やめなさいよ…困ってるじゃない」 「「あ、ミッチーだ!おっはよー」」 (綺麗な人…) 長身で脚も細くスラッとしていて、美人と言える制服を着た女性が入ってきた。 七瀬も思わず、ぽかんと見とれてしまった。 「みちるさん」 「転入生?」 「はい」 恭也がさん付け呼びに敬語ということは、彼女は年上で六年生だと予想が出来た。 みちるが七瀬に近付く。 「私は桂みちる(かつら みちる)。ビショップの一人よ。これから宜しくね」 (この人がビショップ?どうしてクイーンじゃないんだろ…) 七瀬は不思議でならなかった。みちるが微笑むと、女の七瀬でも頬を赤らめてしまう。 「ふふ、可愛いわね」 (そんな事ないですっ!) 違うというように必死に首を振る。 「北岡七瀬ですよ、みちるさん」 「恭也。この子に聞いたのに」 「喋れないんですよ、七瀬ちゃんは」 みちるは目をぱちくりとさせながら七瀬を見た。 すると、眉を下げて悲しげな表情を浮かべる。 「そうなの…」 優しく七瀬の頭を撫でてやり、抱き締めた。 「辛かったよね…他の奴等に何か言われたら、お姉さんに言いなさい!!」 (みちるさん…っ…) 七瀬は久し振りの人の温もりに触れて、目に涙を浮かべた。  
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