Rクラス

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一人一人の出席を確認していく。 「六条悠」 今までリズムよく返事が返って来たのに、急にシーンと止んでしまった。 「六条悠」 黒澤先生は諦めないでもう一度呼ぶ。 しかし、やはり返答なし。 出席簿から顔を上げて、返答をしない本人を睨む。 「オ―イ、六条」 ため息を吐き、悠の元に向かう。 すぐ隣に着けば、見下して暫く様子を見ると…。 「……すー……」 とても心地よさそうに寝入っているのか、静かな寝息が聞こえた。 ましてや、ヘッドホンを付けたままである。 「オイ、六条。お前は、俺に喧嘩売ってるのかな?」 黒澤先生は悠の身に付けていたヘッドホンを外して持ち上げた。 「あ……」 すると、直ぐに悠が目を覚ました。 ボーッとしながら、黒澤先生を見上げる。七瀬からは後頭部しか見えなかったので、やっと横顔が見えた。 悠は無表情のままだ。 「うたた寝なら、許そう。だが、休み時間以外に音楽を聞くのはダメだ」 「……なんで?」 「何でって…校舎内だからだ」 「音楽室とかも校舎内だよ?」 「授業だからだ。校則にもあるだろ、休み時間以外は禁止だって」 「わかったから、返してよ」 「次の休み時間まで没収な」 「先生の…いじわるっ」 ズッキューン 悠は目を潤わせ、少し口を尖らせ、頬を赤らめて、上目遣いで“態と”可愛らしく言った。 女の七瀬も可愛いと思ってしまったほどだ。 そんな仕草の悠に、黒澤先生は心の中で葛藤する。 ヘッドホンを返すか、返すまいか。 「くっ……」 じっと見つめられていれば、黒澤先生は耐えきれない様子で、悠にヘッドフォンを返してしまった。
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