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「暇過ぎる…」
深い溜め息をもらしながら、再び怠そうに千昭が呟いた。
「そんな毎日暇暇言うんだったら、部活入ればいいじゃないか」
「面倒臭い」
「我が儘だな…もう…」
相変わらずのことだからか何も言う気にもなれずに、苦笑を浮かべて肩を竦ませた。
その後、何もしない状態が暫く続き、ノックの音が鳴った。
「千昭坊っちゃま、いらしました。客間に案内しています」
「だから坊っちゃまはやめろって」
椅子から立ち上がって、三人とも客間に向かった。
入ると、ソファに小柄な少女が座っていた。ドアの音に驚いたのかビクンと動いたのがすぐに目に入る。彼女は小刻みに震えて、俯いたままだ。
千昭は直感的に何か察した。
(コイツ……何かがおかしい)
「彼女は、北岡七瀬(きたおか ななせ)さんです」
和臣が簡易に紹介して、さりげなく千昭に近づき耳打ちしてきた。
「七瀬様は声を喪っています、というより喋れません」
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