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そこで、三人は七瀬が本当に喋れないのだと気づかされた。
「本当に…声が出ないんだな」
落ち着いた声音で千昭が呟いた。
悠も黙ったまま、じっと七瀬を見据えていた。
しかし、恭也だけは同情心が芽生えて共に困惑の表情を浮かべた。
恭也の家は有名病院のご子息だ。
小さい頃から病院に遊びにいったりしていたため色んな人を見てきたが、喋れない人は今まで見たことが未だにまだだった。
そのため、戸惑ってしまう。
何がどんなことがあったら、ここまで重度の症状になるのだろうかと。
そこへ水を持ってきた和臣が戻ってき。そして七瀬にコップを渡し飲ませてあげた。
七瀬は、ペコリと和臣に頭を下げお礼を示した。和臣は優しく微笑んだ。
「なぁ和臣」
「はい、千昭様なんでございましょう?」
(最初からそう言えよ…)
いつもの呼称が抜けた和臣に、千昭は心中で毒づいた。
「コイツ、歳いくつ?」
「コイツじゃありませんよ。彼女は16歳ですよ」
「ふ~ん…」
「ああ、そうでした」
ふと思い出したように和臣が声をあげる。
「旦那様が肩書き上、彼女を千昭様の専属メイドになさると」
「は?」
突然で予想もしないことで千昭が声を漏らす。
恭也は顔色を変えて、焦りる。
「それって、七瀬ちゃん危なくないかな?千昭だよ?手をだし…い゛っ!!」
咄嗟に千昭が恭也の足を蹴ったのだ。
「黙っとけ」
「痛いなぁ、もう…」
恭也は千昭に蹴られた足を擦りながら、立ち上がった。
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