勇者の目覚め

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 日もあまり当たらない森林の中、四人の男女が火を囲んで座り込んでいた。青髪の青年は口を機械的に動かし言葉を連ねている。  途中集団の中で一回り大柄な男が鼻をすすり出し、しんみりとした空気が辺りに漂いだしたが、青年はそれを無視して話を終えた。 「俺は村のみんなと姉さんの仇をとる。人に必要とされる勇者になることもその時に決めた。これが俺の旅の理由だ」  青年が口を閉じ、一気に静まり返った森の中を動き回る多数の黄色い眼。音もなく包囲網を縮めていくその異形のものはモンスターと呼ばれており、普通の動物とはかけ離れた身体能力と狂暴性を兼ね備えている。 「何か質問はある? 姉さんのプロポーション以外ならなんでも答えるよ」  青年は周りの状況などお構いなしとばかりに、笑いながら立ち上がった。その時に足が置いてあった大振りの剣に当たり、ガランという独特の金属音が辺りに響き渡る。少しうるさかったのか青年は再び地に座り直し、剣の揺れを手で止めた。  そんな青年に対し、対面に座っていた大柄な男は不意に立ち上がると、青年を指差し自身の胸を大きく膨らます。そして一気に息を吐き出すように口を開いた。
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