何万光年先への想い

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 夜空に煌めく夏の星。地球の公転の関係で、一年中違う星空が描かれる。まるで光の欠片を空というキャンパスにばらまいた様。真上で夜空を横切っている光の帯は、世にも綺麗な天の川。  宇宙の中のほんの小さな一部の銀河。その中にある数億の星の一つの地球。その地球に無数にある海岸線の一つ。  僕は今、その場所で寝転がっている。  何という偶然。何という確率。寧(むし)ろ確率などという概念では言い表せられず、運命という漠然とした不確定要素でないと納得することはできない。  僕らがこの星に生まれ落ちたのは運命なんだ。きっと、意味を持って生まれてきた命なんだ。  僕は、そう考えた事が過去にあった。  根拠のない理由で生かされるのも悪くはない。意味のない命だから、という理由で生を咎(とが)めるよりは、数億倍マシというもの。  "運命"という意味を命になすりつけ、僕は一度だけ死を乗り越えた事がある。  ふと、思った事がある。何ともなしに、考えた。自分がいなくなった後の未来を。地球だけという枠ではなく全体で見た未来のことを。  僕が死んだって、宇宙全体での変化はこれっぽっちも無い。他の誰かが死んでも然り。また、どこかの惑星が死んでも、何かの拍子で一つの銀河が無くなったとしても、宇宙全体で見ればほとんど変化は生じないだろう。  宇宙は無情だ。  淡々とした時を過ごし、今のこの瞬間もだんだんと肥大化し、永遠に近い時間をこれからも過ごすのだろう。  その永遠という時間を刻む中で、僕はいったい、何回生まれ、何回死ねばいいんだろうか。  魂というものは真に一つ。  つまり、全ての生命は同一の魂を持って生まれ変わる、という考えを信じるならば、僕の今の魂はいつまで生き続けなければいけないのか。  それはきっと、宇宙が死ぬまでなのだ。  僕の魂の寿命は、永遠と言っても過言ではないくらいの時なのかもしれない。  それは悲しくも、永遠に近い終焉が訪れるまで、その生命が尽きる事はない、ということ。  永遠が怖かった。  悲しみを終わらしてくれぬ、永遠が。
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