何万光年先への想い

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 夜空を横断している天の川は、夏によく見えるらしい。それに、今日は晴れているせいか、一際はっきりと見える。  あの星たちの放つ光はいったいどれほどの月日をかけてこの地球にやって来るのだろうか。  銀河の直径が約十万光年。つまり、光が十万年という膨大な時間をかけて進む距離。  そうなると、僕の真上に散らばる光の粒が成す帯状の中には、遠いもので八万光年先の星もあるのかもしれない。  気が遠くなる程の距離。  もはや人類が到達することは不可能だ、と割り切ることしかできない距離。  イメージできない。それがどれだけ遠いのかを。遠いんだ、という漠然としたものでしか言い表せず、具体的な距離を言われても、そんな言葉に現実味は見いだせない。  地球上で僕が見上げているこの星は、数光年とか数万光年前の星の姿。  当然と言えば、当然の事実。  しかし、初めてこの事実を知った時は、とても驚いた。目に見える姿形が、そのモノの時間にとっての"今"ではない事なんて、これが初めてだったから。  だから、今の現時刻でのその星の状態などは分からない。もしかしたら、今はもう死んでいるのかもしれない。  でも、その星が歩んだ軌跡、つまりその星の記憶は光となって絶え間なく地球に降り注いでいる。  命を削ってまで放つ光が、誰にも気付かれずに通り過ぎていくなんて悲しすぎる。  つまりは、その星は無視されているのだ。そこに存在していることも、例えその星が死んだとしても、誰からも気付かれない。  そんな事はないように、と。  僕は今日も星空に目を凝らす。
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