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事あるごとに勝負を申し込んでいた南を、あいつはいつも鼻で笑っていた。
その態度が南をもっとイライラさせるのだった。
「・・・・・康介。」
ボソッと“あいつ”の名前を呼んでみる。
そのあとでため息がでた。
大嫌いだった。でもやっぱり・・・・・・。
しばらく会っていないと少し淋しいものがある。
久々に康介(コウスケ)の顔を見たくなった。
康介に会いたくなった。
ーーー康介と話したくなった。
自分でもびっくりするくらい体が先に動いた。
机に散らかっていた教科書やノート、文房具をまとめて鞄に放り込む。
無我夢中で階段を駆け降り家から出た。
自転車のペダルをこぐ。太陽がジリジリと南の肌を焦がす。汗が体中から流れ出る。
それでも南は一度も汗を拭こうとしなかった。
一度も止まろうとしなかった。自分でも分からない気持ちが南を動かしていた。
気がついたら図書館の前にいた。
きっとあいつは・・・康介はここにいる。
そのことだけは変に確信がもてた。
図書館に入るとヒヤッとした冷気が南の汗ばんだ体を包んだ。
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