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「・・・ぷっ。あはははは。」
突然笑い出した南を見て康介は驚いた。
「・・・なんだよ。何が可笑しいんだよっ。」
今もまだ笑い続ける南に半ば呆れながら康介が聞く。
「いやっ。なんかねっ。昔のままだなって・・・思ってさ!・・・康介が昔のままで・・・・うっ嬉しかったんだ。」
ニコッと笑った南の目が潤んでいたのはきっと笑い過ぎたせいだろう。
その言葉を聞いた康介は、最初驚いた顔をしたが、すぐに顔をそらした。
南からは見えないその顔が、夕日の光があたっているわけではないのに赤く染まっていた。
「・・・・・ねぇ。明日キャッチボールしようよ。」
「はぁ~?!なんだよいきなり・・。」
突然の提案に康介はびっくりした。
南自身も何故そんなことを言ったのか分からなかった。
「・・・いいじゃん。康介元野球部だからボールもグローブも持ってるでしょ?あたしもグローブ持ってるし!」
「そ~じゃなくて!」
「あ~・・もしかして勉強する?そーだよねぇ。秀才くんは1分1秒でも長く勉強しときたいんだもんねぇ。」皮肉を込めて南が言い返す。
「わーったよ。あんま長くはできねぇからな!」
「うん!じゃあ明日の3時!・・いつもの公園でねっ!」
「はいはい。提案したお前が忘れるんじゃねぇぞ。」呆れたように康介が言う。
「わっ分かってるよ!」
「んじゃな!俺こっちだから・・・」ニヤッと笑い康介が手を振る。
「うん!・・・じゃあな!」
康介の自転車をこぐ後ろ姿がだんだん小さくなっていく。
夕日に照らされ長くのびた康介の影を見送りながら南の心臓はドキドキしていた。
自分でも気づいてない気持ちが自分の中に眠っていた。
ーーーーただ今は少しでも長く、康介と一緒にいたかった。
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