兄と食卓と僕

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キッチンに立ち冷蔵庫を見る。ある程度買置きはしてあるから大丈夫。二人分の食材はあった。 この家には一軒家だが僕が今まで一人で住んで居た。物心付いた時には、元々放浪者の両親は家を出て行ったきり帰って来る事は無かった。 毎月通帳に生活費が振り込まれ、用事がある時のみメールか電話を入れる。 両親が今何処に居て、何をして居るかなんて知らないし、でもたまにフラッと前触れも無く帰って来て、一時間もしない内に帰っていく。 最後にこの家に訪れた日さえももう数年以上前だった気がする。 それを寂しいとも、悲しいとも思った事は無い。 確かに小学生の時は寂しいと感じる事もあったが、でも今では慣れてしまって。 逆に今日突然来た、あいつを鬱陶しく感じる。 簡単に料理を作り食卓に並べ彼はあどけない笑みでこちらを見る。 何が言いたいのか、解らず見ていた。 「倫理って料理上手なんだね」 あぁそれを言いたかったのか。 僕は何も言わず。 ご飯に箸を伸ばした。
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