兄と風呂と僕

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あれ?何これ?彼の胸に手を這わた。彼の胸には切って開いて塞いだ縫い目が有った。それは痛々しく僕の知らない彼がどれだけ苦労したのか。 僕より体はデカいけど体重は軽いし、華奢な身体には変わりなくて、この身体で生き抜いてきた彼が少し恐ろしく感じてしまった。 最初真っ赤だった顔が徐々に白さを取り戻した。彼の体が身じろぎ少し唸って目をゆっくり開けた。 「あれ?倫理。僕どうして?」 「逆上せたんだよ。お風呂の中で」 僕の先程までの思考とは裏腹に彼はゆっくり間延びした声で僕に話しかける。それに苛ついてしまって、僕は彼に八つ当たりした 「ねぇいい加減さ、ウザいんだよ。君の顔、声、言動。何様のつもり?いきなりきて兄です?ふざけないでよ、僕には兄弟なんて存在しない。君が僕の兄なんて認めない」 言い切った頃には脱衣所から走っていてそのまま家を飛び出した。 雨はまだ降り続いていて、僕の髪や服を濡らしていく。
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