†第三章†事件

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それは高二になって、突然の事だった。 「和巳…今までありがとうな。」 不意にベランダで光司は呟いた。 「俺さ…転校すんだ。」 「え?!」 いや、嘘だろう。 落ち着け、落ち着け、俺! 「まぁた、そんな嘘ばっか…」 「…お前とは…短い付き合いだったな、色々あったけど、ありがとう。」 光司の瞳にキラリと涙が光る。 「そんな…俺…何時もお前が性格悪いとか、根性曲がってるとか色々考えてたのに…」 俺の瞳にも涙が浮かぶ。 「…そか。そんな事考えてたか…」 「…へ?」 隣を見ると光司の姿は既になかった。 「また嘘かよ!」 俺は後を追いかける。 スラリとした光司の身体は身軽に廊下を走り抜ける。 俺もスピードを上げる。 「つっかまえたっと!!」 二年一組の教室の前で捕まえると、不意に光司の身体から力が抜けた。 ††† グラリと力が抜けた光司の身体は、音をたてて倒れた。 「おい!光司!何やって…」 「光司!!」 教室から晃が叫びながら、飛び出す。 「晃??」 「光司!光司!意識あるか?」 倒れて血の気の失せた、光司の頬をピシャリと叩く。 「…晃…」 「怪我はないか?」 「…多分…」 晃は軽々と光司を抱き上げる。 「…晃?」 「和巳、保健室行くから、先生に伝えといて。」 「…あ…ああ…」 俺は呆然としたまま、二人を見送った。 ††† そのまま、光司は教室には戻らなかった。 俺はそわそわしながら、主のいない光司の席を見つめていて、先生に怒られた。 休み時間に、晃を捕まえる。 「…晃!」 「…和巳か、どうした?」 「…光司…」 「ああ、早退した。」 「早退?!」 晃は一瞬、何か言いたそうに唇を動かしたが、プイとそっぽを向いた。 「和巳…」 「…何?」 「まぁ…その…あいつ、身体が生れつき弱いからさ…無理はささないでくれよ?」 そっぽ向いたままの晃の声は、何だか泣いている様で。 哀願されている様で、俺はただ頷くしか出来なかった。 †††
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