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次の日も、光司は休みだった。
「旦那がいなくて大変だなぁ」
なんてクラスの仲間に冷やかされても、俺の気持ちはスッキリしなかった。
休み時間には一組に行った。
「晃ぁ」
「お、珍しいな、和巳…あっ、そっか。」
バスケのボールをクルクル片手で操りながら、何処か淋しげな表情になる。
「まぁ、俺んとこにいろよ?」
「…うん…晃…」
「…何?」
「光司とは長いの?」
一瞬、言葉に詰まった後、晃は少し諦めた顔で重い口を開いた。
「…小学生の時からかな…」
「小学校が一緒だったの?」
「一時期な。」
「一時期?」
俺は顔をしかめる。
「それどういう意味?」
「…二川に聞かなかった?」
「光司の事は知らないって。」
晃も顔をしかめる。
「光司には言わないで、何時も通りにしてくれるか?」
「え??」
「出来ないなら話さない。」
思い詰めた表情に、俺は黙って頷く。
晃の席から、二人でベランダに行く。
ベランダに着くと、晃は口を開いた。
「あいつは病院の学校にいたんだ。」
「…病院…の?」
「あいつは小さい時からずっと病気がちで病院に入院してたんだ。だから病院の学校にいた。知ってる?高台の大きな病院。」
「ああ…あそこの。知ってる。大きいじゃん。」
晃はベランダから、高台を指差す。
「あそこに入院した時にあいつに会った。」
遠い眼差しになる。
「俺さ、骨折して入院したの。二ヶ月。」
「二ヶ月??」
「死ぬ程退屈だったよ。段々友達も来なくなるしさ。」
「俺なら気が狂うかも…だ。」
「そん時、光司に会った。」
晃は高台を見つめている。
「光司は優しく声をかけて、俺の病室とかに遊びに来てくれたりした。」
「…意外だな。」
「……まぁね、あの頃はまだ違ったからな。」
「…まだ??」
「それは言えない。光司と約束してるから。…けど…何時か…言うよ。」
チャイムが鳴った。
「光司は明日来るって!」
晃は笑って、手を振った。
俺も笑って振り返した。
†††
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