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冬の朝だった。
息を白く吐きながら、俺は地下鉄から、人込みに弾き出される様に下りた。
毎日毎日、通い慣れた会社への道。
もう少しで主任になれる。
昔は夢を一杯抱えてた。
けれど、現実なんてこんなもんだ。
俺は会社へと早足で歩いた。
†††
「和巳。」
不意に雑踏の中で聞き慣れた声が聞こえ、俺は俯き気味の顔を不意に上げた。
目の前には…
十年前と変わらぬ光司の姿があった。
スラリと痩せた体にフワリとコートを纏って、光司はあの時の姿で立っていた。
そう、十年前。
俺が十七の頃の姿、そのままで。
†††
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