†第二章†光司

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こうして、半ば無理矢理な形で、俺は光司の友人になった。 そうして解ったのは、光司には本当に友人が一人しかいないって事。 一組の三枝晃が唯一の友人だった。 晃は中学時代からバスケをやっていて、身長は百八十五もある、スゲー恰好いい奴で、女子にすごくモテて、半端じゃない位、バレンタインのチョコとか貰ってたらしい。 晃的にはうざいだけだったみたいだが。 光司も百七十五はある長身で、けれどスラリと華奢で、どこと無く、中性的な雰囲気のあるルックスだった。 肌は地黒の俺なんかと違って、そこいらの女子なんかより、透ける様に白い肌をしていた。 髪や瞳も淡い茶色で、どこと無くハーフみたいな端正な顔をしていた。 ††† 改めて解った事実があった。 光司は虐めにあってはいなかった。 ただ…光司の、人を寄せ付けない雰囲気に皆気後れしているだけで、女子なんかには密かに人気はあった。 何だろう…人を魅了するのに、どこと無く近寄りがたい雰囲気があるのだ。 光司はわざと人を寄せ付けない様にしていた。 晃は別だったが。 ††† 晃は男子女子にも人気者だった。 なのに、常に光司の近くにいた。 後で聞いたら、光司の幼なじみなんだそうだ。 光司も晃には気を許している様で、それが余計に俺の心を掻きむしった。 多分、嫉妬だったんだと思う。 そうして、一年はあっという間に過ぎた。 ††† 俺は単純なせいか何時も光司の嘘に騙されては笑われていた。 クラスでは「何でそんなに騙されてんのに仲良くしてるの?」とか言われつつも、半ば恒例行事になりつつあった。 光司はその時だけ、ケラケラと笑うのだ。 そんな光司を皆見たかったのもあるかもしれない。 その時だけは、普通の十六歳の少年に戻ってるから。 百六十五あるかないかの俺の頭を上からグリグリしながら、笑うのだ。 俺も恥ずかしいけど、そんな光司を見るのは好きだった。 笑うと淡いブラウンの瞳の横に皺が出来るのだ。 そんな光司は何時もの冷めた表情ではなかった。 だから… だから俺は何時も光司の嘘に騙される様に祈っていた。 冷めた眼差しは… 何処か淋しそうだったから。 †††
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