依頼壱   

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「ん?」 ふと、佐久間が前を見る。そこには、アンティーク調の扉が立っていた。横のフックには、『人助け、致します』と、黒字の明朝体で書かれた看板が。 「なんだこれ?」 後ろには何もなく、勿論、支えられている様子もない。扉一枚が、佐久間の前で佇むかの様にして立っているのだ。 「人助け、致します……か」 その言葉に釣られるかの様に、佐久間が恐る恐る扉のノブに手を伸ばす。 生唾をゴクリと飲む音が、大きく佐久間の中で響いた。 「くっ!」 後数センチでノブに手が掛かると言う所で、迷ってしまう。 明らかに怪しい扉。しかし、その隣りの看板の文字が、今の佐久間には狂喜に走りそうになる程、甘美に見えてしまうのだ。
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