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そんなことを思いながら時を過ごしているとまた再び雪を踏み分けこちらに向かってくる音がした
ゆっくりと顔を上げると先ほどの人間が今度は手に何かを下げてこちらに歩いてきていた
「お、ちゃんと大人しくしてたみたいだな」
偉い偉いと言いながら私の頭を優しく撫でる
その手がこの寒さの中でお日様のように温かくて少しだけ身を擦り寄せてみた
その人はおもむろに手に持っていた袋をあさると中から白い包帯と薬のような物を取り出した
そして私の手からハンカチを外すと薬を手とり傷口にそっと塗る
「ちょっと痛いけど我慢しろよ」
とその人は言ったが私にはさほど痛くは感じなかった
きっとそれは寒さで麻痺しているせいだ…この人の手つきが優しすぎるせいなんかじゃきっとない…
消毒を終えて器用に包帯を巻くと
「よく我慢したな」
とまた私をゆっくり撫でた
この人はよく私を撫でる…でも私はそれが不思議と嫌とは感じなかった
そしてまた袋をあさると今度は何やら缶詰と小皿とタオルを取り出した
私の前に小皿を置くとそれに缶詰の中身を盛る
凄く美味しそうなニオイが漂ってきて怖ず怖ずとその人を見上げると、ニコニコしながら私を見ている
ゆっくり口をつけると食べたことのないくらい美味しくて私は夢中になってあっという間にそれを平らげた
私が食べ終わったのを確認するとまた私を撫で私の体に今度は持っていたタオルをふわりとかけた
「俺はこれで行かなきゃならないから、またな…風邪ひくなよ」
そう言い残してその人は去って行った
去り際何度か私を振り返ってはひらひらと笑顔で手を振っていた
かけられたタオルに身を埋めると何だか甘く優しい香りがして思わず少しだけ泣いてしまった
外ではそんな私を隠すかのように雪がただただ降り続いていた
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