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「これ…は…!?」
突如 紅助を中心に一筋の光沢すら見られない漆黒の渦動が凄まじき重圧とともに出現した。
ただ自分の身体がひたすら喰らい飲み込まれているような絶望感、そして感じたことのない苦痛の大きさに 紅助の意識は闇へ堕ちた。
パチッ………。
意識を失った途端に紅助の体の周りに その漆黒の気流の中心で一瞬 火の粉が散った。
ォオオオオ……
紅助の右腕の宝玉から発された その震威と共に紅助の身体はたちまち姿を変えていった。
容姿が高校生だった紅助の姿から 身丈はさほど変わりはしなくも その姿は少年と言うよりは明らかに青年であった。
それもその髪は燃え盛るような真紅色。
身体の変化が静まり、鋭く見開いた瞳も同じく 焔炎そのものを具現化したような真紅色へと変わっていた。
ただ その表情は先程まで此処に在った者と同じく 苦痛に満ちていた。
「ちっ! 何…で蔭霞(かげりがすみ)が…!!」
その真紅色の髪をした青年は自分の首元に感じた ある物の喪失を確認し、何かに内側から喰われていく事による断末魔の叫びを必死に堪え 目の前でただ臆している彼女に余力を尽くして叫んだ。
子犬共々に驚き怯えてた所に呼び掛けられた青年の喚声に我に返った紗絵は、何故 青年が自分が黒真珠を所持している事を知っているのかを冷静に思考出来るほどに気が気ではなかったので、とっさに自分の胸ポケットの中にある黒真珠のペンダントを青年へと投げつけた。
(ドクン!)
ズオォォォォッ!!!
宙へ放り出された黒真珠が突然黒く輝き、青年の体内と周囲で渦巻いていた闇雲を勢いよく吸収していく。
体内から闇雲が消えていくと共に青年の身体が徐々に紅助の姿へと戻っていった。
ォォォォッ……
黒真珠は全ての闇雲を吸収すると 発光が静止し 木の葉が舞い落ちるように地面へ静かに零落した。
ドサッ……。
元の姿に戻った紅助は 体の支えを失い その場に倒れた。
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