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少年は歩いていた。
幾分か微光はあるものの 闇の恐怖に覆われた漆黒の空間に在る一筋の道を。
少年は、何も感じず 何も欲さず そして何も得ぬまま ただ歩いてゆく。
上方からうっすらと光が差し込んだかと思うと、少年の目の前にヒラリと一つの純白な羽根が舞い落ちてきた。
ふと見上げると 何者かが少年に手を差し伸べていた。
その者は 輝きに満ちた女神であるかのような表情で、心を落胆から安泰へと救ってくれるかのような その姿で。
少年は導かれるままに、その手へと自分の手を差し出した。
……………。
…………。
………。
ッ…。
(何だろう これは。
以前にも感じたことのある この感じ。
そうだ…昼間に自分が助けた人からした優しい香り………。)
(!)
紅助は 自分の そのぼんやりとした独り言により 一瞬で目が覚めた。
とっさに目を開けると 暗闇の中にある消された蛍光灯がまず目に入った。
起き上がろうとしたが 何故か体が思うように動かない。
「やっとお目覚めかい、少年。」
エンドがいつもと変わらぬ口調でさらっと話しかけてきた。
「ここ…は?」
「あっ 起きたんだ。
大丈夫…?」
紅助は左方から聞き覚えのある女性の声に首を向けた。
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