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「君は、あの時の…。」
その声の当人、紗絵はニッコリしながら 勉強机のイスをベッド脇へと寄せ ストンと座り、紅助の額に手を当てた。
「熱はとりあえず引いてきてるみたいね。」
「熱…?」
紅助は自分の記憶から幾重に重なった今日の出来事を順々に紡いでいった。
「そうだ、急に体が重くなって……それで全身に悪寒が…。」
「そうだ。あれが何だったかはお前も分かってた筈だ。」
「あれは……翳霞!!
けど何で……。」
エンドは少し呆れた様子で また説明し始めた。
「お前がこいつを助けたときに黒流の珠(こくるのたま)を落としていったんだよ。
それで彼女が預かっててくれたから、なっ♪」
紗絵は自分に対しての呼びかけだと気付くと、少しためらいながら答えた。
「うん……あ、あの時は紅助くん…だっけ?……ありがとね。」
「ああ、うん。こちらこそベッドまで運んでもっちゃって……。」
「あっ、それはうちの執事が運んでくれたの!
倒れたところから家まで近かったからさ。
」
「面倒かけて悪かったな。
おい 紅助 お前の不注意でこうなったんだからな!」
「うん……ごめんね。」
紅助は申し訳なさそうにしゅんとした。
「べ…別に私は大丈夫だから…ね?」
紗絵は落ち込む紅助を必死に励まそうとしていた。
「それよか 紅助、落ち込んでる場合じゃねぇぞ!
……彼女、えっと名前なんだっけ?」
「あっ 私は紗絵、天海紗絵。」
「紗絵…ね。」
紅助は名前を聞いた時のエンドの声に物寂しさが見えた。
「エンド…?」
「あっ…いや何でもねぇ!
とりあえず、率直に言うぜ。
……紗絵は…お前と同じ影因の可能性が高い。」
「なっ!…影因だって!?」
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