Logic.01-盛夏の一刻-

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初夏という一言で言い表すことにそろそろ限界を覚えてきそうなある猛暑の日のこと。 今 問題となっている地球温暖化やら異常気象らを取っ払っても やはり暑さは秋の訪れまでは居留まり続けるのであろうか。 都内から少し西方の郊外地にある町 句鳴市(くなりし)には 多くの河川が行き来しており、猛暑日が訪れると多くの人々が 避暑地として水遊びやパラソルなどを持参し バーベキューなどを遊楽している様子も多々見かけられる。 町全体を見ると、建物は高層ビルらしきものはあまり見られず、この街特有の伝統なんだろうか 赤タイルによって造られた建物が過半数を占めている。 イタリア北東部の港湾都市 水の都 ベネチアにも似通っている事もあり、この季節になるとマスコミが避暑地の取材として来ることもある。 そして ここ連日の猛暑の影響か 街中で避暑を求めた市外の住民の姿も見かけるのも珍しい事ではない。 街中を道行く学生らは どうやら一学期が終わったらしく、各々成績表を見ながら情緒豊かに反応し合い、夏休みの予定を話し合ったり 自慢し合いながら それぞれ皆 帰路についていく。 そんな中 おそらく15.6歳であろう一人の少年が、かなり年期が入っているアパートの屋上という あまり人目に付かない場所で 冷房の排気機にもたれ掛かりながら 路上の歩行人の様子を眺めていた。 少年はふと呟く。 「ふう……暑い…。 こんな暑さでやたら動いてたら倒れちゃうって…。」 どこからか 少しいたずらな笑みを含む 別の男の声。 「そう弱々しく嘆くなっての! 弱音は倒れてから聞いてやっからよ。 …そろそろ行くぜ。」 少年は思いっきり天に向かって体を伸ばした。 「んん………ふぅ…、 よし! 行こうか!」 少年はそのどこからか発せられてる声に応じ 肩に羽織っている黒衣を思いっきり翻した。 一瞬彼を黒衣が覆い隠したかと思うと、スッと黒衣が風のように消え 少年は涼しげな白いTシャツにジーパンという服装へと姿を変えていた。 そして 先程まで手に持っていたはずの空き缶もどこかへ消失していた。 少年はその暑さからか 若干気だるそうに屋上を後にした。
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