Logic.01-盛夏の一刻-

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正午の太陽はちょうど上空中央で日照っており、避暑している人々にとってはそれこそ甘美な夏の恵みといった所だろうか。 ただ 道行く人々にとっては単なる拷問の一環にしか思えてこないのだろう。 「私ね!私ね! 来週から家族でハワイ行くんだー!」 そんな暑さにも負けず、女子学生3.4人が昼間の朗らかさに包まれた赤タイルの住宅街を和気藹々と歩きながら話している。 「良いなぁー ハワイ~ うちなんかおばあちゃんちに行くだけだよ!」 「どっかに行けるだけでも充分良いじゃ~ん(笑) 紗絵はどっか行くの?」 紗絵と呼ばれた その少女は 友人の言葉に少し戸惑いを見せながらも笑顔で答えた。 「私は…プールが壊れて急に部活が丸ごと無くなっちゃったから どうしようか困ってるんだー」 友人ら数人は一同 「ああ、」と妙に年配者みたく声を揃えて頷いていた。 「さすがにプール無しだと水泳部の活動は厳しいもんね~ 近くにプールないし」 「さすがに川で泳ぐわけにもいかないもんねぇ~(笑)」 そんなどこにでもありそうな会話をにこやかに楽しみながら、その女子集の団は、通学路を皆の分岐点まで仲良く歩いてゆく。 ここ句鳴市は 河川により住宅が全体的に結構な比率で 縦横に陸地が分断されており、平地をただ歩いて帰宅できる生徒もいれば 橋を渡ったり あるいは小舟で少し川を渡らなければ帰宅できない生徒さえいる為、大通りに出た途端 帰路が四方八方に分かれるという情景もこの街では決して珍しくはない。 彼女らは川沿いの十字路に出ると いつものように皆それぞれ異なる方へと向きを変えた。 「じゃっ まったねー」 「暇だったらメールしてよねぇ~」 「バイバーイ♪」 各々が軽く別れの言葉を交わし、それぞれ自宅へ足を向けた。
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