きっかけ

4/5
前へ
/67ページ
次へ
ふっと空を見上げても、星は見えない。 都会の激しい光に、幾千年前の淡い光は阻まれてしまうんだろう。 なんかもったいない。 ふと右に振り向くと、サラリーマンはこつこつと足音を響かせながらどこかに電話を掛けていた。 たちまち、どこかの号室から呼び出し音が微かに聞こえてきた。 すごく、聞き覚えがある。 そのまま、俺は廊下を見つめた。 端の10号室。 彼女の家。 サラリーマンが近づく。 会話もなくケータイが閉じられる。 施錠を解除する音。 開く扉。 階段脇に隠れる俺。 止せばいいのに。 半分くらい顔をのぞか、せ、て 「俊樹っ!」 「お待たせ、希紗」
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加