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ふっと空を見上げても、星は見えない。
都会の激しい光に、幾千年前の淡い光は阻まれてしまうんだろう。
なんかもったいない。
ふと右に振り向くと、サラリーマンはこつこつと足音を響かせながらどこかに電話を掛けていた。
たちまち、どこかの号室から呼び出し音が微かに聞こえてきた。
すごく、聞き覚えがある。
そのまま、俺は廊下を見つめた。
端の10号室。
彼女の家。
サラリーマンが近づく。
会話もなくケータイが閉じられる。
施錠を解除する音。
開く扉。
階段脇に隠れる俺。
止せばいいのに。
半分くらい顔をのぞか、せ、て
「俊樹っ!」
「お待たせ、希紗」
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