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10号室の前で固く抱き合っているのは、スーツの似合う格好良い男とギャル風の美女。
おれの、かのじょ。
ふつりあいで。
だけど。
たしかにつきあっていた、
「・・・・・」
気づいたら、マンションを出たところだった。
激しくもがくように息を吸っているのは、階段を急ぎ降りたから?
それとも。
(浮気。…浮気。浮気浮気浮気…)
頭が変なものに支配される。
確かに愛してくれていた彼女を信じていた、のに。
悲しいのか、悔しいのか、怒っているのか、
ぐちゃぐちゃで濁っていて。
だから頭が考えるのを無理矢理止めさせる。
真っ白な頭が次に反応したのは、赤信号の点滅を無視して突っ込んだ自分が轢かれそうになったとき。
その次は駐輪場でエンジンを吹かしたまま棒立ちの俺に向かって吠えた野良犬に。
最後。
帰宅して玄関に突っ立っている俺。
気づいたら、立っていた。
そこで、頭は再び目まぐるしく回転を始めた。
無意識に帰れたことを疑問に思う余裕なんてない。
真っ暗な、ボロアパートの玄関で。
空回りする思考がショートしたのか。
俺は、突っ立ったままだった。
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