しんじつ。～蒼～

終わり

「遅い」
つっけんどんに言われて、俺は苦笑した。
ごめん、と謝る反面、何で呼ばれてわざわざ家まで来てしまったのかという思いに駆られた。

自分は、この女の浮気現場を目撃したのではなかったか。
何故、何もないように笑ってられるんだろうか。

無性に腹がたつ。

「ほら」
投げられたものをキャッチすると、手元にストラップの長い紐が絡まった。
「忘れてたでしょ、ケータイ」
「あぁ…」
ちょっと、どうでもいいと言うような返答。
「いちいち貴方の家に電話してたら、すぐに捕まらないじゃない。いっぱいバイトしてんだから」
彼女は悪戯っぽく笑った。
「今日はね、まず貴方のお店でディナーして、んでビリヤード。あ、あと」
今日のプランを話す彼女を見て。

俺は、今までに思ったこともなかったのに、突然馬鹿らしくなった。