ヘドロ

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外灯が極端に少ない道を歩くのが好き 星が沢山見えるから。 蛙の声が夜空に響きわたる ポケットから三枚の紙切れを出して見つめた こんな物のためにみんな必死になったり 人を殺したり 人の気持ちも変えてしまうことができる 恐ろしいようで くだらない紙切れ 遊ぶにはみんなこれが必要みたい 私には必要ないかも、、、 こんな物欲しかった訳じゃない 快楽だけで十分なのに。 最近満たされない 夏休みが近いのにウキウキもない 車の一台も通らない車道の真ん中を歩く まっすぐに続く白い点 その先に橋があり道は見えない 橋の先には行ったことがない この道の車道と歩道の間に人工の川がある 私は車道で靴を脱ぎ裸足になった 水面に足をそっと入れた 気持ちがいい 私だけの時間 せせらぎが私の足を優しくさらおうとしている 家の方面に向かって逆流に進む 外灯に照らされた水面はオレンジ色のモザイク模様 今日は月のない日だ しばらく歩いて水から出て足を乾かした。 こんな暑い夜にトレーニングのスウェットを着て犬の散歩をしている人が一人 通り過ぎた 靴下と靴を履く 外灯があまりない小道を左へ右へ蛙の声がだんだん大きく聞こえる 「ただいま」 重い玄関の戸を開けた
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