小さな旅行

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香ばしいカフェの香りに ほんのりバニラのような甘さが漂う ちょっとおしゃれな喫茶店。 2人は目を丸くして店内を見回す。 店員さんが案内をしてくれた。 少し柔らかい絨毯に足を取られながらも席へ移動する。 夜の蝶と それを射止めようとする雄の性が集う場所 出勤前だとすぐ分かる ひらひらと舞う漆黒のドレス 桃の花のようなドレスが目に入る 「すごいね。こんなの着てみたいね」 アヤは小さな声で言った ふつうの格好をした私たち 野放しの15歳2人が来るところではない 店員さんがちらちらと私たちを見ていた 席に着きメニューを出された。 「おすすめは何ですか?」 「季節の果実アラモードです。」 私はアヤを見た。 アヤはにっこりと頷いた。 「じゃあそれを二つと、ロイヤルミルクティーを二つで。」 店員さんが上品に一礼をして下がった。 ただ私は子供だとバカにされたくなかった。 少しだけ背伸びがしたい気分だった。
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