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「あ、俺今日は早めに帰らなきゃいけないんだ。ごめんな、クロ太。あんまりかまってあげられなくて」
「ニャ!ニャンニャ!」
『待って』と、私は裕真くんの前に立った。
裕真くんは「ん?」といった表情で足を止め、しゃがみこんだ。
「なに、どうしたの?」
裕真くんの顔が近付き、ドキドキしだす私。
…って、今はそれどころじゃない!
ここに来る前に道ばたで見つけてきた花を渡さなきゃ!
「…ニャ?」
あ、あれ?あれれ??
な、ないー!!
うそでしょ?ここに来るまではちゃんと口にくわえて持ってきてたのに。
知らない間にどこかで落としちゃったのかな?
そんなぁー!
「ニャア…」
「な、なんで急にしょんぼりしてんの?何があったの?」
どうせ言ったって伝わらないって。
私ががっくりとうなだれたその時。
―ぽすっ!
「ニャッ!?」
突然頭に感じた、優しくてあたたかい感触。
裕真くんが私の頭を撫でていたのだ。
「何があったのかはわからないけど、元気だせよ!」
そう言って見せた最高の笑顔に、私はまたドキッとしたの。
裕真くんは「また明日ね」と言い残して歩き出した。
私も「また明日」と心の中で呟いて、裕真くんの後ろ姿をじっと見つめた。
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