巷(チマタ)で噂の…(👂)

14/19
前へ
/1471ページ
次へ
窓際に立つと、洗濯機が上から見てとれた。 だが『小さいオッサン』は、やはり見当たらない。 彼女は気を付けながら、窓をそっと開け始める。 彼女が余裕で出られる幅を作るまで、何分かかったのか分らない程ゆっくりと、音を出さずに開けた。 そこからもゆっくりと、スロー再生でもしているのかと思うくらいの動きでやっと出た。 ベランダ用のサンダルが置いてあったが、音が出てしまう恐れもあり、裸足の方が都合が良かったから、そのまま出てしまった。 洗濯機の横に立つと、ソレは見えた。 暗いグレーの汚れたスーツを着ていたが、今日は腕まくりをして、少し手首から上が見えていた。 やはり髪型は七三分けのようだが、ボサボサでちょっと長めだった。 ネクタイは薄めのグレーで、かなり緩めに付けていて、顔には少し無精髭が生えている。 そんな『小さいオッサン』は、かなり疲れているようで、止め金の所に座り、彼女とは反対側を向いて、ボーッとしていたのだ。 彼女は興奮した。 しかし、携帯を握る手が、硬直してしまっていたのだ。 .
/1471ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21362人が本棚に入れています
本棚に追加