プロローグ

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体が熱い。皮膚が焼ける。視界が暗い。腕が動かない。何かに挟まっているようだ。 パチパチと辺りが焼けている。火事だ。幼かった俺でも理解できる。オレンジと赤の入り雑じった色。蛍のような火花がたくさん宙を舞っていた。 あっという間だった。火の手がまわり、家族共々火の海に飲み込まれた。俺が今生きているのが不思議なくらいだ。 「諦めんな!」 無事だった父さんが残った右手を力の限り引っ張る。無茶だ。助からない。 やがて、遅れて来た救助隊が駆け寄ってくる。 やった、助かる―――― などど気を緩めた瞬間、神は無慈悲な運命を決定した。 一際大きい爆発がすべてを包み込み、視界が一瞬にして赤から黒に染まった。 意識が消える直前、俺は確かに呪った。 この運命を。
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