決まった死

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「ミカド! お前の仕事が決まったってよ!」 神殿の中を走る音が響く。黒いファイルを脇にかかえ、一つの門をこじ開ける。 男は門の中に入り、広場を見渡す。が、目標が見つからない。 「おはよ。ミカドなら食堂に……」 「さんきゅ! じゃな!」 最後まで話を聞かずに男は走り去る。 食堂の中に目標を発見。急いで吉報を届けるべく、男は走って近づいた。 「ミカド! お前の――――」 「『仕事が決まった』。聞こえてたぞ」 先に言われてしまい、男は出鼻を挫かれた。 「そうなんだよ! ほら、コレ」 男が黒いファイルを食事中の少女に手渡す。 「何だ? これは」 開けばわかる。と男が目で促すので、仕方なくミカドは箸をおいてファイルに目を通す。 「……草壁 光一、十六歳、男、死因は車に轢かれそうな者を庇い、交通事故で死亡。……なんだ、この名前と歳と死因しか書いてない役立たずは」 「性別も記載されてるけどな」 野次馬が呟いた。直後、頭にファイルが直撃。野次馬Аがのたうちまわる。 「なんで私がこんな普通の仕事を任されたんだ?」 野次馬を無視して話を続ける。
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