決まった死

5/7
前へ
/368ページ
次へ
大きな音がして神殿のドアが開く。 その中には一人の男が机の上の書類を整理していた。 ミカドはツカツカと男に歩み寄り、荒々しく礼をする。背中まで伸びた髪が宙に舞う。 「恐れながらカミサマ?これはどういうことだ」 全く恐れてはいない態度でファイルを机に叩きつける。 「……はは、どういうこと、なんて言われても……そのままだよ」 飄々した威厳のない態度で男が苦笑いをする。 その態度が気に入らないミカドは再度机を叩く。 「有り得ない、この家族は不幸にもほどがある」 物凄い剣幕に男は唸る。 「だってもう決まったことだし、運命なんだから仕方がないじゃない」 「取り消せ」 は? と男は耳を疑う。 「取り消せ。彼の死亡予定を! こんなのおかし―――」 「ミカドちゃん」 途端に男の雰囲気が変わる。ただ名前を呼ばれただけなのに、威圧感がある。先程のヘラヘラした態度とは考えられない威圧感だ。 「君は、勘違いしているんじゃないかい? 『死期通知』は誰かを死に陥れるのではなくて罪を償うための寿命通知だよ」 「わかっている! だけど……」 「運命は」 またもミカドの話を無視して男は続ける。
/368ページ

最初のコメントを投稿しよう!

72人が本棚に入れています
本棚に追加