零下~BELOW FREEZING POINT~

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汽車に乗り込んで数分、その数分がとてつもなく長く感じられた。 アナウンスが上昇までの秒読みを刻々と読み上げる中、汽車の外にハンターとは別の影が現れた。 それは紛れもない人間の影だ。ヨーコが目を凝らしてみると、その人影はモニカだった。 「モニカ!まだいたの!」 ヨーコが呟いた。しかしモニカには聞こえるはずも無い。モニカは顔面蒼白、眼も虚ろで足取りもおぼつかなかった。そしてフラフラと数歩歩いてそのまま倒れた。 手に持ったケースは蓋が開き、中のカプセルは割れていた。 ヨーコは少しそわそわしてから汽車の扉に向かった。 目の前で倒れている人を放っておけないのだろう。 「待って!あなたあの女を助けに行くつもり?あなたに銃を向けた女よ!」 アリッサがヨーコを止めた。 「その通りだ。それにもうじきターンテーブルが上昇する。取り残されたら命の保証はできないぞ」 ジョージもアリッサに賛同した。 ヨーコも二人に止められ踏みとどまった。 その後は気まずいので誰も窓の外は見れなかった。 その一方カウントダウンが進む。 『5、4、3、2、1、0!』 カウントの終了と共にターンテーブルは地上へ向けて上昇していった。
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