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「痛いのは……少しだけだ……」
何もない所で躓き尻餅をついた。父親が血を滴らせた包丁を向け、近くにいる。
「何が、どうなってんだよ……?止めてくれよ……冗談じゃ、ない……」
涙がこぼれる。こんなことが、あり得るはずがない。悪い夢のはずだ。そう思い込もうとし、――
「か、なめ……ちゃんと……父さんも……行くから、な……」
――包丁が、落ちてきた。
続いて、絶叫と激痛。左肩に刺さっていた。
「だめじゃないか……よけたら……死ねないだろう……?」
父親が要から包丁を抜いた。おぞましい音と共に赤い血が噴き出した。さらに激痛がはしる。
「止めろ……父さん……止めてくれ……!」
要が懇願するよう言った。だが、赤い包丁は要を刺した。右の太もも。さらに激痛がして、要が喉を枯らさんばかりに悲鳴を上げた。
「父さんが……うるさいの……嫌いなのは、知ってる……だろう?悪い子供に……お仕置きしないと……いけないな……」
包丁の柄をつかみ、父親はぐりぐりと傷口を抉るようにした。
「父さん……どうして――?」
そこで要は意識を失った。父親はそれを見下ろし、それから何の感情もない表情で自分の首を掻き切り、命を絶った――。
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