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二年前になるかね……ここで働いている娘の中の一部で幽霊を見たって噂がたちはじめたのさ。
だけどさ、私はいるかどうか分からないものを信じるたちじゃないしね、べつに怖がることも何もなかった。
まあ、話に聞けば爛々と光る眼を持った黒い霞だったそうだよ。
そんなこんなで私らの中で噂が広がっていたころついに女将さんが見ちゃったらしいんだよ。
あの強つく婆でものびるなんて芸当出来るんだねぇ。
そんなこんなで店を数日閉めざるを得ず、ごたごたしていたときに私はそれと出会った。
そうそう、この部屋だったね。
あんたの後ろ辺りに、小さな子どもが居たんだ。
「げ?! 」
その言葉に男は勢いよく振り返り思い切り飛びさがり、そしてなにもいないことを確認し、胸をなでおろす。
「そんなに怖がらなくともいいさ。もういないから。そういう話は苦手な口かい? 」
女はくすくすと笑いつつ彼の肩に手をかけ話を続ける。
二つになるかならないくらいの可愛らしい子どもだったよ。
性別はよく分からないがなんとなくどこかで見たような顔だった。
変だと思ったさ。妓楼にそんな小さな餓鬼はいないはずだからね。
一体どこから紛れ込んだか聞いても無邪気に笑うだけで何も分かりゃしない。
幽霊話のものとは見てくれが違うし実体もあったからね、迷子だろうと暫し遊んでやったら目を離した隙にいなくなっちまった。
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