悲恋の頃に…

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16歳の冬- 運命の宣告を受けてから 戦地に来た 母様に [御國の為に]って 言われて 自分みたいな 歌うことしか出来ない者にも 御國の為に何か出来る なんて軽く考えて、 これから起こる “悪夢”なんて、 予想にもしなかった。 あまりの恐怖 あまりの仕打 自分の名前なんて忘れた ほんとは覚えてるけれど 忘れたくなるくらい切なくなる だって… みんな 俺を抱く人は それぞれ俺とは違う、 愛しい人の名前を呼ぶから。 だから俺はあえて 忘れた振をし名乗り出ない。 涙しながら    ・・ 違う“名前”と重ねて 俺を無茶苦茶に抱く その姿が余りにも 哀しくて 哀しくて “違うよ” “俺の名前は  流鬼  っていうんだよ…” なんて、 言えなかった…。
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