彷徨(さまよ)える狼

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亮佑は広島県を統べる広島県の中央にある施設へと赴いた。 施設には門番が二人。 (二人か…。しかもあれはただの捨て石レベルじゃねーか? 襲撃に備えているとは思えないな…) 亮佑は気配を消す事もせず、門番へと近づいていった。 門番は二人で雑談をしていたが、足音で亮佑が近づいて来た事には気づいた。 「何の用だ?」 「別に…」 亮佑は門番の顔を見る事もせず、スタスタと門番の横を通り過ぎて行った。 門番は当然通すわけはないので、掴みかかろうとした。 「何してっ―――」 門番は亮佑を止めようとしたが、その体はゆっくりと崩れ落ちた。 (こんなんが門番とは……笑わせる) 亮佑は門を潜り抜け、施設へと侵入していった。 「……広いな。」 この施設は一階建てだったが、東京ドーム程の広さはあった。 亮佑は施設内を進んでいくが、一人だけ周りと違う服装をしていれば嫌でも目立つ。 亮佑はすぐに怪しまれ、囲まれた。 「貴様……何者だ?」 「何に見える?」 亮佑は何ら焦る事も無く、歩く足を止めた。 「…………袋の鼠。」 「……そういう事聞いてんじゃないんだけど?」 「ここで死ぬ者の話を真剣に答える気など無い…」 「……そうか…」 亮佑はフードを脱ぎ、ローブに手をかけた。 「この施設を……破壊する!」 亮佑は勢い良くローブを脱ぎ捨て、その姿は露わになった。 「貴様!?その腰に下げている刀は!?」 兵士は亮佑の腰にある刀を見た瞬間、焦り始めた。 「俺の刀だが?」 「貴様が……噂の「深紅」か!?」 亮佑は静かに目を閉じ、ゆっくりと自分を「亮佑」から「深紅」へと変えた。 亮佑は刀を扱う事ができない。 「深紅」とは亮佑が刀を扱うために創り出した亮佑の新たな人格。 刃属性の人間には能力的には劣りはするが、それは本人の力次第。 「如何にも…」
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