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「うわ‥最悪…髪ベタベタじゃん‥」
鏡を見ながら自らの姿を嘆く沙希。
すると、鏡にうつるドアの窓の向こう。
一瞬だが何かが横切ったのが分かった。
「だ‥誰…?」
振り返り小さく呼びかけるが、返答はない。
病院の職員か他の患者だろうか。
沙希は恐る恐るだが、ドアに近づき金属製のノブに手をかけた。
ガチャ…
音を立てて開いたドアからゆっくり強い日の光がこぼれ、沙希は眩しさに一瞬顔をしかめる。
病室の前は窓に面した廊下。だが、恐ろしく静まり返ったそこに人の気配は感じられず、沙希は言い知れぬ不安にかられた。
先ほどの‘何か’はすでに姿が見えなかった。しかし
ガタン…
「!?」
突如響いた廊下の向こうからの物音に、沙希は体から冷や汗が吹き出るのを感じると、視線を廊下の奥へと向けた。
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