144人が本棚に入れています
本棚に追加
街灯すらない深夜の道路を走る一台の乗用車。
運転手の加藤 隆はイラついていた。
新聞記者である彼は長くそして退屈な仕事を終え帰宅の途についたが、彼の楽しみにしていたボクシングの試合中継は結局見れずじまいだった。
恐らく明日の朝刊もしくはニュースでその結果を知る。その事がたまらなく不満だった。
積もる不満をアクセルを踏み込み、スピードを出すことで紛らわせていると、眩い光が目に入った。
「コンビニか…。」
深夜だからこそ輝いて見える、現代人には必要不可欠な要素コンビニ。
加藤は車のハンドルを切り乱暴な形で店の駐車場に車を停車させ、降車し軽い足取りで店内へ。
自動ドアが開くと同時にやや気の抜けた低い声が聞こえた。
「いらっしゃいませ」
レジにいたメガネに小太りな体型が特徴の店員がお決まりの接客をすると、加藤はレジへ歩み寄った。
「マルボロのメンソールボックス。」
加藤がそう言うと、店員は自分の背後にあった棚から緑色の小さなタバコの箱を取り出し、スキャナーでバーコードを読み取り。
「320円です。」
黙ってちょうどの料金を支払うと加藤はすぐに店を出た。
車に乗り、ビニールを破り箱から一本取り出すと、早速火をつけ紫煙を吐き出した。
煙の味が口に広がるのを感じながら加藤はミラーに映る人影に気づいた。
最初のコメントを投稿しよう!