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その人影の正体はスーツ姿の男性だっが、明らかに千鳥足といった様子で、時折ミラーから消えそうになる。
不信に思い加藤はタバコをくわえたまま後ろを振り返ったが、そこには人はいない。
バン!
窓ガラスを何かが叩いた!
すぐさま加藤は視線を自らの横に移した。
するとそこにいたのは顔が赤く紅潮した中年の男性で、加藤の顔を見るやいなや笑みを浮かべ、鼻歌を歌いながらまた千鳥足で歩いていった。
「…酔っ払いじじいが!」
静かに毒づいた加藤。
手近にあった読みかけの厚い漫画雑誌をとり、コンビニからもれる光を明かりに読書を始めた。
時々タバコの灰を備え付けの灰皿に落とし、またページに目を落としていたその時だった。
またしてもミラーに映る人影。先ほどの男性でないのは確かだが、足取りはやはりおぼつかない。
「また酔っ払いか…」
うんざりしたような加藤は雑誌を読む事に専念し、酔っ払いがそばを通り過ぎるのをまった。
酔っ払いは車の横を通り過ぎ、店内へ。
それを見て一安心した加藤はタバコの煙を少し多く吸い、吐き出す。
テレビやパソコンなどの娯楽はなくとも、加藤にとってはかけがえのない心身が休まる時間だ。
しばらくして、加藤はある事に気づいた。先ほどの酔っ払いが店から出てこない。
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